INDUSTRIAL Member Interviews
04秘めた世界を表現する書道クリエイター
書家
栞鳳
Shion / Calligrapher
美しく、しなやかに、新しいことを。
心に秘めた想いを、筆先に込めて。
書を通して日本の伝統文化からありふれた日常を、独自の世界観で表現する書家 栞鳳。家業の足袋会社と繋がりのあったダイマツ松井氏との出会いをきっかけに、インダストリアル事業始め、さまざまな企業とのコラボレーションなど活動の幅を広げる栞鳳。書や自身の表現に対するこだわり、そして作品に込める思いとは。
祖父からつながるDNAが、
自然と私に筆を持たせてくれた。
書道を始めたのは、小学校の頃。子どもの頃から絵を描くことが好きで、書道だけでなく、水墨画も書いてみたりしていました。祖父が書道の師範だったこともあって、筆に触れる機会が多く、自然と書道にのめり込むようになっていきましたね。現在は、日本教育書道研究会でペン習字師範となり、さらに太源書道会理事長で毎日書道会総務の北野攝山先生にご指導いただきながら、幅広い表現方法を身につけられるよう研鑽を積んでいます。栞鳳の『栞』の字には、『教える』という意味がありいろんな人に私の作品を伝えたいという意味を込めています。また、私の師匠の名前にもついていた『鳳』の字を使わせていただき、シオンという名前に。外国人の方からも、響きがいいねと言われてますし、なかなか好評です。(笑)
表現者として活動してからは、作品制作で使う道具にも気を使うようにしています。筆は、祖父が使っていたものを受け継いで私も使っています。自分の書きたいようにいろんなタッチに馴染んで使いやすいですね。筆を持ちやすく、穂先の長さ、毛のコシが程よく弾力があるので、特に大き目の文字を書く時に使用しています。毎日書の練習をしていた祖父。その背中を思い出しながら、私も書き続けていきます。
出会いがきっかけで、活動の幅がぐっと広がる。
仕事としての作品作りが、創作活動の自信に。
制作活動の傍ら、普段は実家の家業も手伝っています。私に書道を教えてくれた祖父が始めた会社で、足袋の卸業。事務としての仕事をしながらも、足袋に筆でオリジナルのデザインを入れてみたり、商品に付加価値をつけるアイディアはたくさん貯めていました。ただ、私が子育て中だったこともあり作品作りの時間には制限が。子育てがひと段落ついたらもっと作品の創作活動にも時間を使って行きたいなと考えていたところ、インダストリアルの松井さんと知り合った事からご縁が広がって、うどん屋『般若林』さんを紹介いただき看板や店内のインテリア用に作品を手がけることに。また、ワーカーズ用品メーカーのユニワールド社とコラボして職人さんのためのガーゼタオルに書を入れたりと活動の幅を広がりました。創作活動はこれまでずっと続けていましたが、ビジネスとして作品を制作した経験がなく、初めての事でどのようにすればいいか悩みましたが、素直にご依頼いただいたクライアント様やそのお客様のことを考えてデザインすることで、クライアント様からも評価いただけてホッとしています。今まで好き勝手書いていた作品作りでしたが、仕事として評価いただけた事で、私自身の自身にもなりましたね。
また、365日、自分の作品をインスタグラムで発信し続けているんですが、私の作品を見てくださった松山の大和陶苑さんから依頼を受けたり、他にもレストランや美容室で店内のインテリアに作品を使ってもらったりと、どんどんアイディアが形になっていくので、今は本当に楽しみながら作品制作に取り組めています。
書で表現する和の伝統文化。
世界を意識したアイディアで発信し続けたい。
普段から考えるより先に自然とすぐに筆を持って動いちゃうタイプで、散歩に出た時にふっと飛び込んだ景色や、その時に心で感じた事といった、『ありふれた日常』をモデルにして創作することが多いですね。ユニワールドさんとのコラボタオルのデザインをやった時なんかも、日本的なデザインを参考にしようと色々と素材を探していた時に、ふと目に入った花札をみてこれだっ!て。書と組み合わせてみたらどうだろうかと思いながら、直感的に頭に浮かんだデザインを表現しました。作品作りには、『書』という性質柄、『和の伝統文化』を交える事にはこだわっていきたいですね。今は、源氏物語を書きたいなと考えています。例えば、着物の帯などに源氏物語を描いて、海外へ日本文化を発信できたら素晴らしいなと考えて、現在、プリント企業と準備を進めています。
今後は、もっと表現の幅をもっと広げたいと思っていますし、来年から活動を本格化していろんなことに挑戦していきたいですね。現在、フランスのエージェントから引き合いをもらっており、パリの展示会などにアプローチしていきたいと思います。また、家業の足袋事業でも、自分の書と絡めた海外アパレルとのコラボレーション企画なども構想していて、やりたいことが尽きません。これからも、書や絵画を通して、見ている人にほんのちょっと元気になってもらえたり、その瞬間だけでも生きてて良かったと感じてもらえたらと思っています。